それでも人生にイエスと言う

もう、ただの日記だに

小説『告白』湊かなえ

告白
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posted with amazlet at 09.08.15
湊 かなえ
双葉社
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友人が本を借してくれたので読みました。ハードカバーだったので、自宅で一気読み。 一話目のラストで、「うぉぉぉぉぉっぉぉぉ」って感じ。後は…。

内容をまったく知らなかったので、読み始めは、自嘲気味で自序的な文体から、サリンジャーの『ライ麦畑で捕まえて』ぽいなと思ってたんだけど、全然違ったw。

「この悲惨な物語の背景には、HIV感染、いじめ、精神疾患モンスターペアレンツ、家庭崩壊、少年犯罪、といった、さまざまな現代の問題が根幹にあることを忘れてはならない。」 なんてと言うと思ったら大間違い。

この話からは登場人物のエゴしか見えてこない。

彼らは皆、先にあげた問題で苦しんでいないのだ。葛藤もそこそこ、物事をさっさと割り切り、自分の目的のために突き進む。「え?何がいけないの?」とでも言いたげな感じで。 「娘を殺された仕返しにHIVウイルスに感染させてやることの何がいけないの?」 「あいつが俺のこと馬鹿にするから、殺したんだよ。悪いことだってわかるけど、やっちゃったんだもん。」 「お母さんに気づいてもらうためには、人殺しして目立つしかなかったんだからしょうがないじゃん。」 その冷めた姿はある意味では現代っぽさを反映しているのかもしれない。

はじめはギリギリできた共感が、話が進むにつれて、自分勝手で短絡的な思考の登場人物のオンパレードについていけなくなる。あまりに行き過ぎで、読了後「あ、こりゃファンタジーだな。」と自己完結した。

もっとも、この救いようのない物語をファンタジーで終わらせてくれたのは筆者の優しさなのかもしれないが。あえて、人間の自分勝手な部分のみに徹底的にクローズアップしてくれて助かった。

ちなみに、面白いか、面白くないかで言えば、面白いと思う。ただ、なんとなく、ネット小説を感じさせたのは、文体が軽いからか? 『告白』が好きな人は絶望の世界がお勧め。 現実を舞台にしつつも、非現実的であれば不幸話ははっきりいって楽しいものだ。