それでも人生にイエスと言う

もう、ただの日記だに

【漫画】木尾士目『ぢごぷり』を読んで

どこかの漫画広告で凄惨な育児シーンを見かけてうっかり購入。

ぢごぷり(1)

ぢごぷり(1)

内容はレビューに書かれている通り「育児の暗黒面」のみを描いた漫画です。萌え系の表紙からは想像もつかないほどの悪態を作中の母親は我が子に投げかけます。いや、悪態を通り越してこれは「呪詛」に近いんじゃないか…な。そんな内容なので、賛否両論です。

作者が男性だ。とか、掲載誌がアフタヌーンだ。とか、完全なフィクションだ。そういった前提を踏まえる必要もあるんでしょうが、新生児期を乗り越えて今も育児まっただ中の母親として率直な感想を述べます。

そうね、描かれている育児の苛酷さはこれが現実だと思う。

私は里帰り出産だったので、身の回りの家事全般は両親のサポートを受けることができて、育児のみをやればよかった。それでもしんどかったですね。一人で新生児を相手していたら…と思うとゾっとします。(まぁ、里帰りすることで、別のトラブルもあったりするんですけど。それはまた別記事で)

特に寝不足の描写はまさに、このとおりですね。それでも、他の子に比べたら、うちの子は楽なほうだったろうなーと思います。ネットでいろいろ他の子のケースを読んだりすると思う。楽な方だった私ですら、寝不足時になかなか寝付いてくれない時はイライラしてきて「もー何が不満なの!!」って声を荒らげたり、トントンが切り替わってッパーンってケツビンタしたりもした。布団の上に、放り投げようとしたこともありました。夜が来るたびに恐怖を抱いていた。だから気持ちはわかる。

ただ、気持ちが分かるといっても、それでもこの主人公には違和感を感じてしまいますね。

踏み越えては行けないギリギリのラインまで行ってしまうことも確かにあるけれど、それは瞬間最大風速的な感情で、基本的には我が子は愛おしいと思うんだけどなぁ。それを、この主人公の様に「どうしても可愛いとは思えない」「幸せじゃない」なんて言い切れることなんてあるんだろうか…。それも慢性的な感情ですよね。1巻では、まだ、負の感情を抱いた自分に対して自己嫌悪をしているのに、2巻ではそれもなくて、ごく日常的に悪びれもせず負の感情を吐露する。まるで可愛いと思える時が一切ないみたいな感じ。生理的微笑に「もう、だまされないぞって思う」って憎しみを込めてつぶやけるんだろうか。育児ノイローゼだとはいえ、こんなことってありえるんだろうか。ここまで徹底的に愛情が欠けている母親が、子を育てられるのか。感情が高ぶった時に、踏みとどまるための愛情が微塵も感じられない。こんなの、この子すでに殺してるレベルだわ。でも不思議なことに虐待的なシーンは無いんです。そして夢子ちゃんは育ってる。それが違和感なんですよね。そこがフィクションだと思う。

徹底的に育児の暗黒面のみを描きたかったんでしょうね。これが作者にとっての育児の真実だったのかな。そう、この作者は子どもを可愛いと全く思えていなかったんじゃないだろうか。だって、2巻のあとがきにすら「育児の大変さ」ばっかり主張してるくらいだし、赤ちゃんが全くデフォルメされてなくて可愛く描かれていないのには悪意さえ感じるくらいだもの。

1巻あとがきで、他の育児エッセイ漫画にはない裏を描きたかったみたいなニュアンスのことを行っていますが、その他の育児エッセイ漫画だって特別、暗黒面を隠してるわけではないと思う。負の感情ももちろん抱くけど、それを上回る我が子への可愛さがあるというだけなんじゃないだろうか。

蛇足ですが、この主人公の年齢(18歳)の出産なら産後の回復は圧倒的に早いだろうし、寝不足にも強いと思う。若くてもしんどいものはしんどいですが、30代よりはマシです。