それでも人生にイエスと言う

もう、ただの日記だに

【書籍】藤井誠二『人を殺してみたかった―愛知県豊川市主婦殺人事件』

いろいろ思う所あって、最近この類の文献を読んでいる。

この本はタイトルでだいぶ損をしていると思う。この安っぽいタイトルからだと、「少年の心の闇は現代社会の闇を反映〜」とか「この少年も被害者である〜」みたいな論調の本なのかな。と思いながら読み進めていったんだけど、書き綴られている内容は、極めて冷静に事件を分析しようと努力しているものだった。

この本の内容を鵜呑みにするならば、彼は純粋な好奇心から殺人を犯しているといえる。事件を起こして注目されたいとか、殺す事が楽しいとか、苦しんでる様子を見たい。とかでは決してない。

「人を殺す経験をしたらどうなるのか?」

ただそれを試したかったんだろう。殺人は、今の社会では悪で罰せられるということを彼は理解していた。だが、その社会的規律では彼を止める理由にならなかった。

恐ろしいけど、私はなんとなく彼の気持ちが分かる。彼と違うところは、私の場合、現代の道徳的観念が染み付いていて実行には移せないだけだ。彼を抑止できなかった社会的規律は私には十分に効いている気がする。

向こう側に行くか、行かないか。それはなんだろう。今回、この少年はたまたまアスペルガー障害の固執な思考がが踏み越えてはいけないところまで行ってしまった感があるけれど、私も結局、彼と本質的には一緒なんじゃないか。って思う。その結論を出すには、もう少し、他の文献を調べてみたいところ。

巻末にこの本に対する専門家方の感想が掲載されてるのだが、これがまた面白いので、それも一読の価値ありです。